江戸城 桜田門(重要文化財)

江戸城の小田原口に1636(寛永13)年、外濠などを巡らせた江戸城総構(惣構=そうがまえ)の際に桝形門に改築したのが桜田門。1860(安政7)年、この桜田門の外で、水戸藩浪士らによる大老・井伊直弼(いいなおすけ)の暗殺事件が発生。これが映画やドラマ化されている「桜田門外の変」。門は往時のままに現存し国の重要文化財です。

桜田門は江戸時代初期の建築で国の重要文化財

外側の高麗門
内側の渡櫓門

江戸城の築城当初は、江戸城の南側に位置するため、小田原街道(北条家の拠点だった小田原城)の起点となっており、小田原口と呼ばれていました。

3代将軍・徳川家光の治世である1636(寛永13)年、延長14㎞の長大な外濠が完成し、江戸城が総構が誕生した際に、西の丸の南側入口として桜田門は建築されています(扉の釣金具には「寛文三年」の刻銘が入っています)。
現存の門は、1663(寛文3)年の再建で、国の重要文化財。

名前の由来は、このあたりの地名が桜田郷だったから。江戸城三の丸の入口である桔梗門(ききょうもん)も桜田門という名があるので、江戸時代には桔梗門を内桜田門、こちらを外桜田門と呼び分けていました。
現在、桜田門と通称されるのはこの外桜田門です。

他の門と同様に、外側に優美な高麗門(こうらいもん)、内側には防御に役立つ渡櫓門(わたりやぐらもん)を配した枡形門(ますがたもん)です。

外側(南側)から登城すると、左に桜田濠、右に凱旋濠を眺めながら橋を渡ると、高麗門。
高麗門をくぐると枡形の空地があり、右折すると渡櫓門という構造です。
桜田門の桝形は15間(27m)×21間(38m)あり、320坪という広さは、現存している江戸城の城門のなかでは最も大規模な枡形構造です。
大正12年の関東大震災で破損し、その際に鉄網土蔵造りに改修されています。

桜田門の正面(豊後杵築藩松平家屋敷跡)には現在、警視庁が建ち、このことから警視庁が「桜田門」とよばれることがありますが、これはあくまで隠語です。

桜田門外の変

月岡芳年『安政五戊午年三月三日於桜田門外ニ水府脱士之輩会盟シテ雪中ニ大老彦根侯ヲ襲撃之図』

1860(安政7)年、桜田門外で水戸藩浪士らによる彦根藩主で大老・井伊直弼の暗殺事件が起こります。これが桜田門外の変。
井伊直弼の強権政治(安政の大獄)に憤激した水戸浪士らは、襲撃を計画。3月3日(雛祭り)、品川宿の旅籠を出立し、愛宕神社で本懐成就の祈願を行なった後、雛祭りで登城中の井伊の行列を桜田門に入る直前で襲撃。このことが幕府の弱体化を世にさらけ出し、公武合体、和宮の輿入れという流れを生んでいきます。

井伊直弼の駕籠が雪降るなかを出立した彦根藩邸上屋敷は現在の憲政記念館あたりです。
愛宕神社(東京都港区愛宕)境内には、「桜田烈士愛宕山遺跡碑」が、豪徳寺(東京都世田谷区豪徳寺)には、井伊護衛のため殉職した彦根藩士8人の「桜田殉難八士之碑」が立っています。
また、南千住回向院(東京都荒川区南千住)には、刑死した水戸浪士の墓が残されています。

「桜田門外の変」はこれまで10本の映画化され、近年では「水戸藩開藩四百年記念」と銘打った『桜田門外ノ変』(関鉄之介役:大沢たかお、井伊直弼役:伊武雅刀、監督:佐藤純彌、平成22年・東映)。

逆に、彦根藩側の下級藩士の立場を描いたのが浅田次郎の『五郎治殿御始末』(ごろうじどのおしまつ)を原作にした映画『柘榴坂の仇討』(彦根藩士志村金吾役:中井貴一、井伊直弼役:中村吉右衛門、監督:若松節朗、平成26年・松竹)です。

古地図&絵図に見る江戸城桜田門・彦根藩上屋敷


錦絵に見る彦根藩上屋敷・桜田濠

歌川広重『江都勝景 桜田外の図』(天保6年~10年頃)
歌川広重『江戸名所 外桜田弁慶堀』

江戸時代には桜田濠を弁慶堀と呼んでいました。上のふたつの錦絵に描かれたのはともに彦根藩井伊家の上屋敷。江戸時代後期とはいえ天保年間なので、まだ桜田門外の変が起こる前。それでも雪景色が描かれています。

 

江戸城 桜田門
名称 江戸城 桜田門/えどじょう さくらだもん
所在地 東京都千代田区皇居外苑1
関連HP 東京都千代田区観光協会公式ホームページ
電車・バスで 東京メトロ有楽町線桜田門駅から徒歩1分。東京メトロ丸ノ内線・日比谷線・千代田線霞ヶ関駅から徒歩3分
駐車場 周辺の有料駐車場を利用
問い合わせ 千代田区観光協会 TEL:03-3556-0391/FAX:03-3556-0392
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
江戸城 坂下門

江戸城 坂下門

2018年1月12日

江戸城 田安門(重要文化財/北の丸公園)

2017年1月24日

江戸城 清水門(重要文化財/北の丸公園)

2017年1月23日

関連記事

よく読まれている記事