東京都羽村市にある多摩川河口から53.9kmに位置する堰が羽村取水堰(はむらしゅすいせき)。玉川上水の取水口で、左岸側(上流から見て)にある全長380mの投渡堰(なげわたしぜき)と、右岸側の固定堰で構成される世界的にも珍しい堰です。現在の堰は明治44年改築(大正13年増築)のコンクリート製。
投渡堰と固定堰の間には「筏通し場」が現存!
もともとは承応3年(1654年)、玉川上水開削時に設置されたのが始まりで、当初の堰は木製だったため、洪水で流されたりしていました。
江戸時代には蛇籠(じゃかご=竹で編んだ籠の中に砕石を詰め込んだもの)と木製の投渡堰で水を誘導し、水を取り込み、現在、阿蘇神社が鎮座する下に長さ2間半、幅2間2尺の三角枠が3ヶ所設けられていました。
現在は、投渡堰と固定堰で多摩川の水を堰き止め、第一水門で取水し、30m離れた第二水門で水量を調節(間にある小吐水門から余分な水、土砂を多摩川に戻しています)。
さらに500m下流の第三水門から地下導水管で、村山貯水池(多摩湖/東大和市)、山口貯水池(狭山湖/埼玉県所沢市・入間市)に運ばれ、東村山浄水場(東村山市)などで浄水されます。
投渡堰は、多摩川に支柱を立て、鉄の桁を渡し、桁に投渡木(なぎ)と呼ばれる丸太を渡し、細い木の枝を束ねた粗朶(そだ)、砂利を敷き並べたもので、国内ではこの羽村取水堰が唯一の例で、投渡堰の技術を後世に伝承しています。
投渡堰と固定堰にあるスロープは、かつて多摩川で木材の筏流しが行なわれていた時代の「筏通し場」の跡です。
現存する「筏通し場」は、享保6年(1721年)に設置。
明治時代には筏1枚につき16文を徴収し、堰の維持管理に充当していました。
現在、魚道が固定堰側に築かれているのも、この「筏通し場」を保存するため。
また水門脇を流れる多摩川には、水門側の土手を壊さないために土手から斜めに多摩川に突き出した「出し」が9ヶ所設置され、川の流れを弱めています。
土木学会選奨の土木遺産にもなっています。
羽村取水堰 | |
名称 | 羽村取水堰/はむらしゅすいせき |
所在地 | 東京都羽村市羽東3-8-32 |
関連HP | 東京都水道局公式ホームページ |
電車・バスで | JR羽村駅から徒歩10分 |
ドライブで | 圏央道日の出ICから約4.5km |
駐車場 | 8台/無料 |
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