東京都小金井市、都立小金井公園内にある江戸東京たてもの園・西ゾーンにあるのが、田園調布の家(大川邸)。大正14年に、当時の新興住宅地、田園調布に建てられた住宅で、居間を中心に食堂・寝室・書斎が配置されたモダンな造り。当時としては珍しい、全室洋間です。
大正デモクラシーを背景に、居間中心型、椅子座式の住宅
田園調布は大正7年、実業家・渋沢栄一らにより、当時イギリスで提唱された田園都市構想をモデルに、『理想的な住宅地「田園都市」の開発』として住宅開発された住宅地。
購入者の住宅建築にあたっても「建物は三階建て以下とすること」、「建物敷地は宅地の五割以下とすること」、「建築線と道路との間隔は道路幅員の二分の一以上とすること」、「住宅の工費は坪当たり百二、三十円以上にすること」など厳しい条件を付けています。
田園調布の家(大川邸)を建てたのは、鉄道省土木技師・大川栄。
所有者が数回変わりましたが、平成5年まで田園調布で使われていました。
木造平屋建ての「居間中心型」で、居間を中心に、周囲に玄関ホール、食堂、寝室、書斎、バーゴラが配置され、建築当初はここで夫婦と子供2人、お手伝いさんの合計5人が暮らしていたそうです。
設計は、建築家・三井道男(みいみちお)。
三井道男の父・三井道郎(みいみちろう)は、ニコライ堂の司祭で、大川栄もニコライ堂の信徒だったことから、岡田信一郎事務所に勤める三井道男に設計を依頼したのです。
大正11年、文部省が加わった「生活改善同盟会」が組織され、欧米の住宅形式に近い、椅子座式を奨励し、関東大震災後に震災復興で建築された同潤会アパートにも採用されています。
さらに「間取りを家族本位に改めること」などの「住宅改善の方針」が出されていますが、田園調布の家(大川邸)もそれに沿ったものといえるでしょう。
居間中心型となっているのも、大正デモクラシーの家族平等の思想を背景に(前近代的な家父長的な部屋割を排し、女性や子供も個室を持ち、家族団らんの場として居間が中心の住宅)、住宅の近代化の象徴として提案された住宅です。
江戸東京たてもの園・田園調布の家(大川邸) | |
名称 | 江戸東京たてもの園・田園調布の家(大川邸)/えどとうきょうたてものえん・でんえんちょうふのいえ(おおかわてい) |
所在地 | 東京都小金井市桜町3-7-1 都立小金井公園内 |
関連HP | 江戸東京たてもの園公式ホームページ |
電車・バスで | JR武蔵小金井駅から西武バス、小金井公園西口下車。または、関東バス三鷹駅行きで江戸東京たてもの園前、小金井公園前、スポーツセンター入口、下車 |
ドライブで | 中央自動車道調布ICから約8km |
駐車場 | 小金井公園第1駐車場(454台/有料)・第2駐車場(114台/有料) |
問い合わせ | 江戸東京たてもの園 TEL:042-388-3300 |
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