小金井市
プレスマンユニオン編集部
玉川上水の桜(小金井桜)
東京都福生市の平和橋から杉並区・浅間橋までの24kmにも続く都立公園が、玉川上水緑道。そのうち、小金井市を流れる部分は、小金井の桜(「小金井サクラ」)として国の名勝に指定される部分。もともとは8代将軍・徳川吉宗の命で大岡忠相が植えさせたヤマザクラが起源という桜並木です。
広重も描いた小金井桜が復活!
本来はこのヤマザクラが小金井桜です
元文2年(1737年)、大岡忠相の命により、ヤマザクラの苗種を、玉川上水堤に植栽し、桜並木としたものが始まり。
ヤマザクラは吉野山(現・奈良県吉野町)、そして常陸の桜川(現・茨城県桜川市磯部)から取り寄せましたが、当時「西の吉野、東の桜川」と並び称された桜の名所です。
ソメイヨシノが人工的に開発、植栽されるまでは、桜といえばヤマザクラのことでした。
歌川広重も『冨士三十六景』武蔵小金井で、玉川上水堤の桜の割れた幹の間(洞)から富士山がのぞく姿を描いています。
天保7年(1836年)に刊行された『江戸名所図会』には、「おほいに減じておよそ三百株あまりあり」と記され、植栽から100年ほど経た江戸時代後期には、すでに老木となり、幹に洞ができている部分もあったのだと推測できます。
明治22年4月11日、甲武鉄道(現・中央本線)の新宿駅〜立川駅間が開業すると、玉川上水の最寄り駅となる境駅(現・武蔵境)と国分寺駅には、花見シーズンに割引切符が発売され、臨時列車を増発、東京から花見客を誘致していました。
玉川上水周辺の農家は、花見茶屋に変身し、大いに稼いだそうです。
玉川上水堤に桜を植えたのは、花見で土を踏み固めるということと、桜の花びらに浄水作用があると信じられていたから。
植物学者・三好学(みよしまなぶ=天然記念物の概念を日本に広めた先駆者)は、小金井桜を研究し、ヤマザクラの天然変種の一大集積地であることを明らかにし(ここからさらに北へとヤマザクラが伝搬)、大正13年12月9日、奈良の吉野山、茨城の桜川と一緒に国の名勝になっているのです。
昭和初期までは、花見の名所として大いに賑わいましたが、昭和27年に桜まつりが復活した頃には、戦争という混乱もあって、三好学博士が命名した「富士見桜」、「日の出桜」といった多くの銘木は失われていました。
玉川上水が小平監視所(東京都水道局の施設)から暗渠で東村山浄水場へと送られるようになったことから、小平監視所下流の水が失われ、ヤマザクラが保全される環境を失い、ケヤキなどの雑木が繁殖して雑然とした景観に変り果て、さらには玉川上水の法面(のりめん)が崩壊するような事態が生じてしまいました。
昭和61年からは高度処理された下水が玉川に流れるようになりましたが、その後も1年ごとに10本ほどの桜が失われ、危機的な状況になりました。
そうしたことを背景に、小金井市は、平成22年3月、文化財保護法に基づく東京都水道局の「史跡玉川上水整備活用計画」(平成21年8月策定)に沿って「玉川上水・小金井桜整備活用計画」を策定。
国の名勝小金井サクラの再生・復活へ向けた事業が開始され、令和元年までに、小金井公園に並走する小金井橋〜梶野橋間に美しい桜並木が復活しています。
歌川広重『冨士三十六景』武蔵小金井
歌川広重『江戸近郊八景之内 小金井橋夕照』
玉川上水の桜(小金井桜) |
名称 |
玉川上水の桜(小金井桜)/さくらじょうすいのさくら(こがねいさくら) |
所在地 |
東京都小金井市桜町〜緑町〜関野町 |
関連HP |
小金井市公式ホームページ |
|
電車・バスで |
JR武蔵小金井駅・東小金井駅から徒歩20分 |
ドライブで |
中央自動車道調布ICから約8km |
駐車場 |
周辺の有料駐車場を利用 |
問い合わせ |
小金井市生涯学習課文化財係 TEL:042-387-9879 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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