【地図を旅する】 東京にもあった県境未確定の地(江戸川区・江戸川水閘門周辺)

東京にもあった県境未確定の地(江戸川区・江戸川水閘門周辺)

令和4年の『全国都道府県市区町村別面積調』によれば、全国で県境の未確定な場所は17ヶ所。そのなかで最多の3ヶ所が東京都との境界問題で、東京都は全国TOPの境界未確定都道府県に。江戸川と旧江戸川の分岐点、江戸川水閘門周辺も県境未確定地のひとつです。

「江戸川河口出張所」の建つ場所は河原番外地!

東京にもあった県境未確定の地(江戸川区・江戸川水閘門周辺)
旧江戸川の東側にある河原番外地

首都高速7号小松川線・京葉道路(国道14号)が江戸川をまたぐ下流側で、江戸川は、旧江戸川と江戸川に分かれています。
現在の江戸川は、大正8年に開削した江戸川放水路。
江戸川はかつて、何度も氾濫を起こしたため、上流側、江戸川の起点部分に関宿水閘門(せきやどすいこうもん/大正7年着工、昭和2年完成)を設けて、流入する水量を調節し、さらに江戸川放水路を開削して、旧江戸川の流量を調節したのです。

さらに江戸川(江戸川放水路)と分かれる旧江戸川の起点部分に江戸川水閘門(えどがわすいこうもん)を設置(昭和11年着工、昭和18年完成)し、渇水時の海水の溯上を防止、さらに上流側の水位を安定させています。

春には江戸川水閘門沿いの堤の桜並木が一斉に花開きますが、実はこのあたりが、県境未確定地。
国土地理院の地形図でも、東京都江戸川区と千葉県市川市の境界線がプツンと途切れています(TOPの画像)。

Googleマップは、お構いなしに旧江戸川の中央に境界線を引いていますが、これは本来「川の中心が境界」という考えと、Googleマップのシステム上の問題で表示する物件の帰属(住所の確定)がないと困るから(実際には境界未確定なので破線を引いているのは間違いです)。

江戸川放水路の開削後も、それまで同様に旧江戸川の中央に境界線は引かれ、当初は「領土問題」は生まれませんでした。
ところが、昭和11年、国が江戸川水閘門を築く際、旧江戸川の流路を西寄りに変更したため、なんと往時の境界線が陸地部分に含まれることになったのです。
これが境界問題の発端で、当然ですが、江戸川区は従来の境界線(江戸川だった時代の川の中央部分)の維持を主張し、新たに生まれた土地は江戸川区の飛び地だと主張します。

対する市川市は「境界線は本来の考え方である旧江戸川の中央にすべきだ」とこちらも正論を訴えて譲りません。

新しく生まれた土地の現在の名称は、目下、帰属がないため、河原番外地。
この地に住む住民はゼロで、国土交通省「江戸川河川事務所江戸川河口出張所」が建つのみ。
未確定地でありながら、他とは違って税収などの大きな問題を含まず、せいぜいがゴミ処理程度なので、問題解決は先送りされてしまうのです。

Googleマップでは、しっかりと千葉県市川市側に建っている「江戸川河川事務所江戸川河口出張所」ですが、国土交通省江戸川河川事務所では、地番のままの河原番外地ではまずいため(江戸川区と市川市の境、河原番外地となってしまうため)、ホームページなどの住居表示は〒133-0062東京都江戸川区東篠崎町250とし、暫定的に江戸川区の扱い。

東京都の抱える3ヶ所目の県境未確定地「河原番外地問題」、まだまだ解決策は見当たりません。

【地図を旅する】vol.6 東京にもあった県境未確定の地(江戸川区・江戸川水閘門周辺)
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江戸川水閘門

江戸川水閘門

東京都江戸川区東篠崎町と千葉県市川市の境にある旧江戸川を仕切る水門と閘門が江戸川水閘門。江戸川放水路と旧江戸川の分岐点にあり、旧江戸川の水の流れを調整するために昭和11年に着工し、戦時中の昭和18年に完成しています。今も現役で、プレジャーボ

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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。