新宿区
プレスマンユニオン編集部
四谷於岩稲荷田宮神社
東京都新宿区左門町17、四谷三丁目交差点の南、須賀神社の西にあるのが、四谷於岩稲荷田宮神社(よつやおいわいなりたみやじんじゃ)。4代目・鶴屋南北の『東海道四谷怪談』の主人公・お岩ゆかりの社と伝えられています。もともとは御先手組同心・田宮家の屋敷神で、明治12年に焼失し、昭和27年に再建されたもの。
『東海道四谷怪談』の主人公・お岩さんの話は創作!?
お岩の墓は、東京都豊島区西巣鴨4丁目の妙行寺にありますが、明治42年に現寺地に移転するまでは四谷鮫ヶ橋南町(現在のJR信濃町駅周辺、南元町)にありました。
旗本・田宮又左衛門の娘で、養子の田宮伊右衛門の妻・お岩(於岩)は、寛永13年2月22日(1636年3月29日)没。
雑司ヶ谷四谷町での『四谷怪談』の主人公ともされるお岩(於岩)ですが、菩提寺の妙行寺に伝わる話では怪談はあくまで創作で、真相は夫婦仲睦まじかったとか。
しかも夫婦によって田宮家の家勢を再興したことで、尊崇した屋敷神が「お岩さんの稲荷」として有名になったというのが真相とのこと。
お岩没後の200年ほど経た文政10年(1827年)、町年寄が幕府に提出した『文政町方書上』のなかの『於岩稲荷由来書上』には、貞享年間(1684年 〜 1688年)、四谷左門町に田宮伊右衛門と妻のお岩の話が記載されていますが、すでに妙行寺の伝承とも異なる内容になっています。
鶴屋南北の『東海道四谷怪談』は『文政町方書上』の2年前に、文政8年(1825年)、江戸中村座で初演されているので、その影響を受けたとも推測されるほか、田宮家に伝わる伝承としてはお岩は貞女で、夫婦仲も睦まじかったということなので、まさに後世の創作ということになります。
江戸時代に『於岩稲荷由来書上』が記されるほど、お岩さんへの信仰があり、さらに江戸時代も後期には『東海道四谷怪談』の上演もあって、多くの人が於岩稲荷田宮神社に参拝に来たようです。
もともと田宮家の屋敷神だったものが、『東海道四谷怪談』の隆盛後、於岩稲荷と称されるように。
その於岩稲荷田宮神社は、明治12年に火災に遭い、『東海道四谷怪談』を上演する歌舞伎役者らが協力して、芝居小屋に近い東京市京橋区(現・東京都中央区新川2丁目)に移転(京橋は江戸歌舞伎発祥の地)。
焼け跡も田宮家が管理し、小さな祠が築かれるのみとなりましたが、昭和初期に陽運寺が創建され、お岩信仰を後世に伝え、昭和27年に寺の一角に四谷於岩稲荷田宮神社が再建されました。
こうしたことで、現在、於岩稲荷田宮神社は移転先の中央区と元々の新宿区と2ヶ所あることに。
新宿区左門町の方は、四谷於岩稲荷田宮神社という飛び地扱いになっていて、今も『東海道四谷怪談』の歌舞伎興行の際には安全と成功を願って関係者が参拝する習わしがあります。
祭神は、豊受比賣大神(とようけひめのおおかみ)と田宮於岩命(たみやおいわのみこと)の2柱で、もともとの屋敷神は豊受比賣大神だと推測できますが、稲荷神(宇迦之御魂神・うかのみたま)と習合し、同一視されたため、稲荷神社と称しているのです。
旧社地に建つ陽運寺の本堂は、栃木県の沼和田(ぬまわだ=栃木市)にあった宝暦7年(1757年)築の薬師堂を移築したもの。
お岩さんとのゆかりで、悪縁を除き、良縁を招く、縁結び・縁切りの寺となっています。
四谷於岩稲荷田宮神社 |
名称 |
四谷於岩稲荷田宮神社/よつやおいわいなりたみやじんじゃ |
所在地 |
東京都新宿区左門町17 |
|
電車・バスで |
東京メトロ四谷三丁目駅から徒歩5分 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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