文京区
プレスマンユニオン編集部
炭団坂
東京都文京区本郷4丁目、樋口一葉菊坂旧居跡のある菊坂から坪内逍遥旧居・常盤会跡へと上る石段の坂が、炭団坂(たどんざか)。本郷台地の高台へと上る坂で、全長は35mほどですが急な石段が続き、途中には3ヶ所の平坦なテラスが設けられています。司馬遼太郎の『街道をゆく』本郷界隈にも登場。
昭和初期まで日常生活に使われた炭団が名に付く石段
炭団(たどん)とは、七輪、火鉢、炬燵(こたつ)などで使う固形の燃料のことで、木炭の粉末を布海苔(フノリ)などの結着剤と混ぜ合わせ、団子状に整形して乾燥させたもの。
旧暦10月の初亥の日(11月中旬頃)が江戸の武家屋敷の「炬燵開き(こたつびらき)」、庶民は「初亥の日」から12日後の二番目の亥の日が「炬燵開き」で、江戸の人々は冬場には炭団を使った炬燵を愛用していました。
坂の名は、炭団を売る商人が通る道、急坂だったので雨上がりにはよく人が転がり落ちて、泥で真っ黒になった様子が、木炭などを丸く固めた炭団に似ていたことに由来するともいわれ、定かでありません。
江戸時代の豪商・塩原太助(しおばらたすけ)は、炭屋山口屋で奉公、本所相生町(東京都墨田区両国3丁目)で独立後に、炭団を発明して大成功を収めていますが、本所で製造された炭団が本郷へと売りに来ていたのかもしれません。
炭団坂の坂上には坪内逍遥が明治17年〜明治20年に暮らし、『小説神髄』、『当世書生気質』を執筆した旧居跡があり、逍遥の門下生が「逍遥宅は東京第一の急な炭団坂の角屋敷、崖淵上にあったのだ」と記しています。
坪内逍遥が結婚して転居した後には、旧松山藩(愛媛県)出身の学生のための寮「常盤会寄宿舎」となり、明治21年、正岡子規も入居。
夏目漱石は、たびたび「常盤会寄宿舎」を訪れ、結核を患い喀血(かっけつ)し倒れた子規を見舞ってもいます。
司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』の主人公のひとり、秋山好古(あきやまよしふる)は、日清・日露戦争で騎兵部隊指揮官として活躍した後、陸軍中将の多忙な身で「常盤会寄宿舎」の第3代目監督を務めており、炭団坂が『坂の上の雲』のモチーフという説も生まれています。
坂下には、樋口一葉、宮沢賢治らの居宅だった跡もあり、空襲被害を免れた路地には樋口一葉も使ったと伝わる井戸も残されています。
炭団坂の西側には鐙坂(あぶみざか)もあり、江戸・東京の坂道好きには人気のエリアになっています。
炭団坂 |
名称 |
炭団坂/たどんざか |
所在地 |
東京都文京区本郷4丁目 |
関連HP |
文京区公式ホームページ |
|
電車・バスで |
東京メトロ・都営地下鉄本郷三丁目駅、都営地下鉄春日駅から徒歩5分 |
駐車場 |
周辺の有料駐車場を利用 |
問い合わせ |
文京区アカデミー推進課観光担当 TEL:03-5803-1174/FAX:03-5803-1369 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
この記事が気に入ったら
いいねしよう!
最新記事をお届けします。
-
東京駅・動輪の広場
東京都千代田区丸の内1丁目、東京駅丸の内南口、地下1階の丸の内地下南口改札前(改札の外側)にあるのが、動輪の広場。かつて東海道線を走っていたC62-15型蒸気機関車の動輪(直径1m75cm)が3つ並んでシンボルになっています。銀の鈴とともに東京駅を代表する待ち...
カテゴリ: 千代田区, 東京の待ち合わせ場所, 見る
-
東京の廃線跡を歩こう! 全12線
東京都内には、小河内ダム建設の資材を運搬した東京都水道局小河内線(水根貨物線)、武蔵野競技場への中央線の支線、米軍立川基地への引込線、そして陸軍の軍用鉄道、都電の専用軌道など数多くの廃線跡が残されています。散策に絶好、あるいは散策途中に見学できる12線を紹介し...
カテゴリ: NEWS&TOPICS
-
野川の桜並木|調布市
東京都調布市を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川、野川(のがわ)。国分寺市を源流とする野川ですが、調布市内の御塔坂橋(武蔵境通り)〜榎橋(三鷹通り)〜細田橋の間には、両岸にソメイヨシノが植栽され、開花シーズンには両岸の歩行者・自動車専用道を歩けば、お花見を楽...
カテゴリ: 東京の桜, 見る, 調布市
-
大仏パゴダ(上野大仏)
上野公園に建つ、明治5年創業の西洋料理の草分け上野精養軒。その近くにあるのが大仏パゴダ。関東大震災で崩れ落ちるまで、この大仏山と称する地には大仏が鎮座していました。現在では薬師仏を祀るパゴダ様式の祈願塔と志納所があり、大仏の顔面部のみ保存展示され、「これ以上落...
カテゴリ: 台東区, 見る
-
東京三大タワーとは!?
東京には数多くの展望台がありますが、塔状の高層建築物をタワー(tower)と定義するならば、東京スカイツリー、東京タワーは、東京の二大タワー。もうひとつ、江戸川区にある公共施設、タワーホール船堀の船堀タワー(無料)を加えて、東京三大タワーと呼ばれています。 東...
カテゴリ: NEWS&TOPICS
-
第93回早慶レガッタ|2024
2024年4月21日(日)、東京都台東区、隅田川の新大橋上流から桜橋上流で、『第93回早慶レガッタ』が開催されます。明治38年に隅田川向島にて第1回大会が開催された歴史ある大会で、昭和53年に復活。新大橋上流(浜町公園付近)から桜橋上流まで、3750mのコース...
カテゴリ: イベント, 台東区
-
上野恩賜公園・不忍池ボート場
東京都台東区、上野恩賜公園の不忍池(いのばずのいけ)にあるのが、不忍池ボート場。不忍池は、弁天島を中央に、北側の鵜の池、ハスが茂る南側の蓮池、西側(不忍通り沿い)のボート池に分かれています。ボート乗り場はボート池の弁天島側にあり、不忍池辯天堂から橋でつながって...
カテゴリ: 台東区, 遊ぶ
-
奥多摩湖・麦山の浮橋(ドラム缶橋)
東京都西多摩郡奥多摩町、奥多摩湖の湖上にあるのが麦山の浮橋(ドラム缶橋)。昭和32年に完成した小河内ダムによって出現した人造湖が奥多摩湖。奥多摩湖にはダム建設時に水没した道の代替として設置された2ヶ所の浮橋があり、そのうちのひとつ麦山の浮橋は、ドラム缶橋として...
カテゴリ: 奥多摩町, 東京の橋, 見る
-
長池見附橋(旧四谷見付橋)
東京都八王子市、多摩ニュータウンの長池公園にある長池見附橋(旧四谷見付橋)は、国道20号(新宿通り)の、JR中央線四ツ谷駅上に架けられていた跨線道路橋(こせんどうろきょう)。大正2年に竣工した橋長37m、幅員22mの道路橋で、鉄製アーチ橋としては現存する日本最...
カテゴリ: 八王子市, 東京の橋, 見る
-
第42回墨堤さくらまつり|墨田区|2024
2024年3月16日 (土)~4月7日(日)、東京都墨田区の墨田区立隅田公園で『第42回墨堤さくらまつり』を開催。隅田川の川沿いに続く隅田公園ですが、浅草側(台東区側)だけでなく、墨田区側にも注目。夜桜見物が可能で、地元町会の模擬店や向嶋墨堤組合の芸妓茶屋、銘...
カテゴリ: イベント, 墨田区, 東京の桜