寛永寺・清水観音堂

寛永寺・清水観音堂

徳川3代(家康・秀忠・家光)に仕えた天海大僧正は、2代将軍・徳川秀忠から上野の山を寺地として与えられると寛永2年(1625年)、寛永寺を創建。寛永8年(1631年)に五重塔とともに創建されたのが清水観音堂で、京の清水寺を思わせるような懸造(かけづくり)となっています。国の重要文化財に指定。

江戸庶民に親しまれた名所

寛永寺・清水観音堂

天海大僧正は、江戸城の鬼門(北東)封じの意味合いから上野に寛永寺を創建。
当時の上野には伊勢津藩主・藤堂高虎、弘前藩主・津軽信枚、越後村上藩主・堀直寄の3大名の下屋敷がありましたが、わざわざそれを取り上げて寺地にしているのです。
さらに京の鬼門封じの役割を担った比叡山延暦寺に対し、東の比叡山という意味合いを込め東叡山寛永寺としています。
東の天台宗の拠点として創建された寛永寺ですが、天海大僧正は、上野を京に見立てているのは間違いありません。
現在の下谷は当時、坂本と名付けられましたが、これは比叡山の麓の坂本と同じ。
さらに不忍池は、琵琶湖に見立て、琵琶湖に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)から弁才天を勧請し、不忍池辯天堂を建立しています。
こうした点から、清水観音堂も、京の清水寺を強く意識し、それに見立てて懸造にしたのです。

京・清水寺の義乗院(清水寺六坊のひとつ、廃仏毀釈で廃絶)・春海上人から、清水寺安置の千手観世音菩薩像が天海大僧正に奉納されたことにちなみ、摺鉢山(すりばちやま)に懸造で創建。
元禄時代の初期、今の噴水広場の場所に根本中堂の建設が決まり、元禄7年(1694年)に現在地に移されています。
寛永寺の諸堂は、戊辰戦争などで焼失しているため、上野の山に現存する、創建年時の明確な最古の建造物となっています。

本尊・千手観世音菩薩(秘仏)は、平安時代の比叡山の高僧・恵心僧都の作で、『平家物語』にも登場する平盛久(たいらのもりひさ)が清水寺に奉納し、千日参りの祈願をしたという伝承があります。
源平の合戦で敗れた平盛久は、鎌倉・由比ヶ浜の斬首の際に、刀が折れる、さらに北条政子の夢に清水寺の高僧が現れて盛久の赦免を願ったなどという奇瑞(きずい)があり、ついには助命されたのです(鎌倉市の長谷には奇瑞が起こったことを記した「主馬盛久の頚座」が立っています)。
この奇瑞が午の年・午の日・午の刻に起きたことから、秘仏・千手観世音菩薩のご開帳は、年に1日、2月の「初午(はつうま)法楽」の日に行なわれる決まりとなっているのです。
江戸三十三箇所観音霊場の第6番札所で、毎月17日が縁日の法要です。

清水観音堂の舞台前、不忍池側には歌川広重の「名所江戸百景」にも描かれた「月の松」があり、京の清水寺を思わす舞台からこの「月の松」と不忍池を眺める景観は、江戸時代後期には江戸庶民の行楽の地としても人気を博したのです。

浮世絵に見る 清水観音堂

寛永寺・清水観音堂
『東都花暦 上野清水之桜』(渓斎英泉)

東都花暦十景と銘打った錦絵。
渓斎英泉が描いた清水観音堂の山桜です(当時はまだソメイヨシノがありません)。
東都花暦十景では神田川の蛍(『茗溪之蛍』)、不忍池の蓮(『不忍蓮』)などを描いています。
当時(旧暦)の花暦では桜は3月です

寛永寺・清水観音堂
名称 寛永寺・清水観音堂/かんえいじ・きよみずかんのんどう
所在地 東京都台東区上野公園1-29
関連HP 清水観音堂公式ホームページ
電車・バスで JR・京成・東京メトロ上野駅から徒歩3〜10分
問い合わせ 寛永寺・清水観音堂 TEL:03-3821-4749
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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