東京・葛西にある地下鉄博物館に展示される「東京地下鉄道1000形1001号車」(日本初の地下鉄車両1001号車)が、平成29年9月15日付けで国の重要文化財に指定されています。日本初の地下鉄として昭和2年12月30日から上野~浅草間をはしった電車で、鉄道用電気車両(電車)としては初の指定となります。
当時の最先端の安全対策を講じているのも指定の理由に
昭和2年12月30日、東京地下鉄道(現・東京地下鉄=東京メトロ)が東洋初の地下鉄として営業を開始した上野~浅草間2.2kmを走行した車両。
製造は、日本車輌製造。
その後昭和43年4月まで間、営団地下鉄(現・東京地下鉄=東京メトロ)銀座線で運転されていました。
全鋼製、自動扉、自動列車停止装置の採用などの防災・安全対策や、内装、照明、吊り手なその乗客向けの設備に地下鉄ゆえの特徴が見られ、我が国の地下鉄電車の嚆矢(こうし)であるとともに、後の地下鉄車両の規範となった車両であり、鉄道史、交通史上に重要であることが重要文化財に指定の理由。
東京地下鉄道1000形電車1001号車の特長
当時の正式名は、オールスチールド・オーバーラウンルーフ形・ダブルエンド貫通式ボギー車。
地上を走る既存の鉄道以上に厳格な安全に対する配慮がなされています。
(1)ドアや窓枠など一部を除いて車体は全鋼製
車体の難燃化を図るため、当時主流であった木製車両ではなく、鋼鉄が用いられました。
床も騒音対策が施された難燃性になっています。
(2)日本初! 自動列車停止装置を装備
日本で初めて自動列車停止装置(打子式ATS)を搭載し、安全性の向上を図っています。
ニューヨーク市地下鉄やドイツ・ベルリンSバーンで同種のシステムが導入されていたのを参考に導入されたもの。
単純な機構のため信頼性が高く、打子式ATSでの衝突事故はゼロです。
運行の複雑化に対応できないため、現在では使われていません。
(3)当時では珍しかったドアエンジンを搭載
当時鉄道省で試験されていた国産の自動戸閉装置(圧縮空気で開閉できるドアエンジン)を搭載し、全扉の開閉を自動化しています。
(4)吊手はリコ式(スプリング式)を採用
使用しないときは、バネで窓側に向かって跳ね上がり、走行中に左右に揺れない構造のアメリカ製のリコ式吊手を採用しています。
リコ式の吊革は、バネの力で固定され、持つ人の好みに応じて調整できる仕組み。
(5)客室灯はおしゃれな間接照明を設置
地下空間という環境を考慮し、直接光が入っても眩しくなく、影ができないよう間接照明を採用しています。
窓の上に取り付けた大型白熱灯の下部を覆い、光を天井に反射させるという形式で、当時としては世界的にも画期的なものでした。
(6)車体の塗装はベルリンの地下鉄を参考に
車体の塗装はオレンジイエロー(オレンジ色がかった黄色の色合い)で、これはベルリンの地下鉄(Uバーン=U-Bahn Berlin)の塗装を参考にしたといわれており、ベルリンの地下鉄は今も同じオレンジイエロー。
車内はチークカラー、ライトマホガニーなどで、間接照明とあわせてぬくもりを感じさせるカラーリングになっています。
リベットを縦横に打ち込んでいるのは、当時はまだまだ溶接技術が未熟だったから。
東京地下鉄道1000形1001号車の車歴
■昭和2年11月 日本車両製造で製造
■昭和2年12月30日 東京地下鉄道・上野~浅草間で営業運転を開始
■昭和43年4月 営業運転から引退
■昭和44年12月 展示のため営団地下鉄から交通博物館へ寄贈
■昭和59年5月15日 地下鉄博物館の開館に伴って、交通博物館から地下鉄博物館を運営する財団法人地下鉄互助会(現・公益財団法人メトロ文化財団)へ長期貸与
■昭和59年7月12日 地下鉄博物館において展示開始
■平成21年2月 平成20年度経済産業省近代化産業遺産に認定
■平成28年12月5日 地下鉄博物館開館30周年を機に、東日本旅客鉄道から公益財団法人メトロ文化財団へ無償譲渡
■平成29年8月7日 一般社団法人日本機械学会より機械遺産に認定される
■平成29年9月15日 国の重要文化財に指定
■平成29年12月30日 地下鉄90周年
地下鉄博物館 | |
名称 | 地下鉄博物館/ちかてつはくぶつかん TOKYO METRO MUSEUM |
所在地 | 東京都江戸川区東葛西6-3-1 東京メトロ東西線葛西駅高架下 |
関連HP | 地下鉄博物館公式ホームページ |
電車・バスで | 東京メトロ東西線葛西駅からすぐ |
ドライブで | 首都高速湾岸線葛西ICから約2.8km |
駐車場 | 18台/無料 |
問い合わせ | 地下鉄博物館 TEL:03-3878-5011/FAX:03-3878-5012 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |