東京都台東区上野公園、洋画家・黒田清輝の作品を展示する「東京国立博物館黒田記念館」の道路を挟んだ向かいにあるのが、京成電鉄の博物館動物園駅跡。かつては上野動物園と現在の国立博物館への玄関駅として機能した駅で、平成16年に゙廃止。そのレトロな駅舎は、今も威容を誇っています。
皇室の世代御料地に築かれたため、特異な外観に

京成電鉄は、不忍池の東側の地下に京成上野駅があり、そこから上野恩賜公園の地下を通り抜けて、日暮里駅へと向かっています。
上野動物園の地下を通っていることは、あまり知られていません。
昭和8年12月10日、京成本線の上野公園駅(現・京成上野駅)延伸開通に合わせ、東京帝室博物館(現・国立博物館)、東京科學博物館(現・国立科学博物館)、恩賜上野動物園、東京音樂學校・東京美術學校(現・東京藝術大学)への玄関駅として開業したのが、動物園前停留所(博物館動物園駅)。
動物園前停留所(博物館動物園駅)の地上部分の出入口は、上野動物園正門(当時)と東京帝室博物館敷地内の2ヶ所設けられ、「東京国立博物館黒田記念館」前は東京帝室博物館敷地内(現在も国立博物館の敷地内です)で、皇室財産の世代御料地。
世代御料地ということで、皇室の許可を得て、東京帝室博物館のイメージを壊さないような駅舎ということで、設計は中川俊二(なかがわしゅんじ)が担当。
「世代御料地内に建設するため品位に欠けるものであってはならない」ということから、昭和天皇出席の御前会議でデザインが決定するという曰く付きの建物です。
一見すると国会議事堂の塔部分を思わせますが、鉄筋コンクリート造り平屋建て。
京成電鉄は「西洋風の荘厳なつくり」と紹介しています。
地下ホームは2面2線の相対式ですが、大きなトンネルを掘らなくても済むように、上下線のホームをズラして設置しています。
困難を乗り越えて建設された地下駅でしたが、ホームが短く4両編成しか停車することができないという大きな欠点も。
しかも4両編成でさえ先頭車両の端の部分はホームからはみ出している状態でした。
その後、恩賜上野動物園の正門の位置の変更などもあり、利用者も減少。
京成電鉄も6両編成が当たり前となると、博物館動物園駅は前時代的な存在となり、平成9年4月1日に休止、平成16年4月1日に廃止となったのです。
現在、東京都選定歴史的建造物に指定される建物は、東京都美術館の資材置き場として余生を送っています。
平成30年には廃止後初となる一般公開を人数限定で実施しましたが、ホーム横を列車が運転するので、今は車内から窓越しに暗いホームを見学するのみとなっています。
上野恩賜公園の片隅に残る、「博物館動物園駅跡」とは!? | |
名称 | 博物館動物園駅跡/はくぶつかんどうぶつえんえきあと |
所在地 | 東京都台東区上野公園13-23 |
電車・バスで | JR・東京メトロ上野駅、京成上野駅から徒歩15分 |
ドライブで | 首都高速上野ランプから500m |
駐車場 | 周辺の有料駐車場を利用 |
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