浅草寺(せんそうじ/東京都台東区)のおみくじは、凶が出やすいといわれていますが、実はこれは真実。江戸時代に定められたという「観音百籤」(かんのんひゃくせん)に従っておみくじの大吉、吉、半吉、小吉、末小吉、末吉、そして凶の割合が定められていて、凶はなんと30%も占めているのです。
おみくじに興味があるなら、まずは、浅草寺へ!
現存する最古のおみくじ(御籤)は、中国・南宋時代(1127年〜1279年)に観世音菩薩のお告げを図解した『天竺霊籤』(てんじくれいせん=86枚が現存)。
日本では江戸時代初期(17世紀以降)の御籤本(みくじぼん)が現存し、いずれの書も100籤100図で構成されるため、この『天竺霊籤』もかつては100枚あったと推測できます。
観世音菩薩のお告げを図解したもので、上段には婚姻、失せ物、求財などに対しての吉凶判断、中段に御籤の題と番号と図、下段に五言四句の漢詩とその解釈が記載され、現在、寺で見かけるおみくじ(五言四句の漢詩で吉凶を占う1番から100番までのおみくじ)のまさに原型です。
岩手県二戸市の古刹、天台寺(昭和62年に瀬戸内寂聴が住職となり注目されました)には竹の棒に漢詩が記された観音籤が現存し、入れ物の筒に「応永十六」とあることから、室町時代の応永16年(1409年)には、すでに日本に観音籤が伝わっていたことがわかっています。
室町時代に庶民にも広がり、江戸時代には各地の観音巡礼など信仰から観光へと姿を変えた観音信仰(現世利益的な信仰、江戸時代には札所の観光的な解説書なども普及)を背景に、日本に観音様の前で引いて吉凶を占う観音籤(かんのんくじ)が広まっていったのです。
ここで登場する日本のスーパースターが、平安時代の天台宗の僧・良源(元三大師=比叡山延暦寺の中興の祖)で、元三大師良源を象った護符には、「厄除け大師」(角大師)としての効果があるとして、護符とともにその信仰が広まりました。
中国の御籤を日本に伝える現存最古のものが、貫文2年(1662年)の『天竺霊感観音』、元禄8年(1695年)の『観音籤註解』で、日本で起こった元三大師信仰と中国から伝来した観音籤が融合して、現在のおみくじブームが生まれました。
貞享元年(1684)には「籤で得た吉凶の判定は、あたかも鏡を照らすかのように らすかのように 少しの過ちもないもの」と記された『元三大師百籤』(がんざんだいしひゃくせん)も出され、その広がりがよくわかります。
天台宗では良源(元三大師)が観音菩薩に祈念し授かった、五言四句の偈文(げもん)100枚がおみくじの原型としています。
良源(元三大師)は、100枚の偈文の中から引いた1枚に進むべき道を読み取り、数多くの人を迷いから救ってきたというのがその理由。
江戸時代初期、徳川3代に仕えた天海大僧正は、元三大師のお告げで信州・戸隠神社で偈文100枚を発見、「元三大師百籤」として寺を通じて庶民にも広がっていったのです。
江戸時代にはそれが合わさったこの元三大師百籤、観音百籤がブームとなり、以降、浅草寺でもこれを用いているのです。
実は、浅草寺のおみくじは、江戸時代の観音百籤に記載される吉凶の割合のままで、分配は大吉17%、吉35%、半吉5%、小吉4%、末小吉3%、末吉6%、凶30%となっているのです。
つまり、仮に100回チャレンジすれば、3割近くは凶が出るので、4人家族で参詣しておみくじを引いたら、ひとりは凶が出る可能性が大ということに。
ちなみに、神社でもおみくじがあるのは神仏習合時代の名残ともいえますが、小正月にその年の作物の生育を占う粥占神事(かゆうらしんじ)などの神様にうかがいを立てるという風習が背景にはあり、観音様のお告げ、神様の神意の違いこそあれ、内容はよく似ています。
正しいおみくじの引き方は意外に難解
観音様を前にして、正しいおみくじの引き方は、参拝前に身を清め、寺では手を洗い、口をすすぎ、香を焚き、一心に観世音菩薩を念じ、観音経を読経することから始まります。
次に聖観音(しょうかんのん/真言は「オン アロリキャ ソワカ」)、十一面観音(真言は「オン ロケイジンバラ キリク ソワカ」)、千手観音(「オン バサラ タラマ キリク ソワカ」)、如意輪観音(「オン バラダ ハンドメイ ウン」)の真言(梵字で書かれた呪文=マントラ)をそれぞれ333回唱え、礼拝を33回行なってからみくじ箱を振り出しますが、その際に、疑いの気持ちをもってはなりません。
比叡山延暦寺・四季講堂(元三大師堂)では予約で、昔ながらの相談からスタートし、僧侶がおみくじを引いたほうが良いかどうかを判断した後、僧侶がお経を唱え、おみくじをひき、その内容を解説(元三大師のお答えの解説)するという吉凶占いも行なわれています。
【知られざる東京】浅草寺のおみくじに凶が多いのは本当!? | |
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