温泉は火山性温泉と非火山性温泉に大別できます。東京都心の銭湯などで利用される天然温泉の「黒湯」は、当然、非火山性温泉です。太古の地殻変動などで当時の古い海水が地中に閉じこめられている化石海水型と呼ばれる温泉で、塩分を多量に含有しているので、よく温まります。
50万年前の海水が黒湯となって湧出!
大森海岸、蒲田など海岸に近い地域では、現在の海水が地下水や化石海水に混入している可能性もあり、さらにミネラル豊富という場合も。
蒲田の温泉はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉で、源泉の温度は20度に満たないため、浴用で加熱しています。
下丸子、洗足、池上、蒲田、六郷、羽田、大森などには合計十数軒の温泉銭湯があり、一大温泉地となっています。
蒲田駅前に建つ「SPA&HOTEL 和」は、この大浴場に黒湯を配した、シティホテルで、都心で温泉気分を満喫できます。
逆に、横浜、川崎などの茶褐色の温泉は塩化物が少なくナトリウム−炭酸水素塩泉(重曹泉)だったりしています。
川崎市高津区の天然温泉銭湯「千年温泉」、「たちばな温泉たちばな湯」はともにナトリウム-炭酸水素塩(重曹泉)です。
東京都心の港区麻布の温泉銭湯「麻布黒美水温泉 竹の湯」も、ナトリウム−炭酸水素塩泉(重曹泉)で、川崎と似た成分です。
東京では300m以下という比較的に浅いボーリングで黒湯が湧出するので、至るところで温泉銭湯や、温泉ホテルが営業できますが、足立区などでは地下水の揚水規制もあり、温泉を断念している銭湯もあります。
浅草寺周辺の台東区でも黒湯は湧きますが、近年、温泉銭湯が相次いで閉店。
代わって「天然温泉凌天の湯 御宿野乃浅草別邸」など、温泉付きホテルなどが登場しています。
こうした化石海水は、東京・横浜の地下にある上総層群(かずさそうぐん)にプールされた化石海水ですが、近年では1000mもの大深度掘削で、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉などが湧出するケースもあります。
上総層群の地層中に貯留されている温泉は、はるか昔に地層が堆積した際、当時の海水が砂などの粒子の隙間に閉じ込められたもの。
海水が上総層群の地層に封じ込められてから少なくとも50万年は経過していますから、まさに「化石化した海水」(化石海水)ということになるのです。
実は地下1000mを掘削すると、25度前後の湯が湧き、温泉成分が乏しくても25度以上の温度があれば温泉法では温泉と呼べるので、こうした「なんちゃって温泉」的な存在もあるかもしれません。
東京都心にはなぜ天然温泉の「黒湯」が湧く!? | |
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