六義園

5代将軍・徳川綱吉の信頼を得て側用人(そばようにん)となった柳沢吉保の別荘として、1695(元禄8)年に造園された大名庭園。敷地面積約8万7000平方メートルを誇り、江戸初期を代表する池泉回遊式庭園には、将軍・綱吉も58回ほど訪れたと伝えられています。春の枝垂れ桜、秋の紅葉時期にはライトアップ、夜間入園も実施。

柳沢吉保が自ら設計したこだわりの大名庭園

 

 
柳沢吉保が武蔵国川越藩主だった1695(元禄8)年、5代将軍・徳川綱吉より下屋敷として与えられたのが、駒込染井村の前田綱紀(加賀藩4代藩主=100万石を誇る最大の大藩となり、この時代に栄華を極めていました)の旧邸。

庭園は柳沢吉保自ら設計。7年の歳月をかけて「回遊式築山泉水庭園」を造り上げています。
吉保のこだわりから、紀州(和歌山県)の和歌の浦など、『万葉集』や『古今和歌集』などに詠まれた諸国の名勝の地を模した、88の景色を巧みに取り入れた名園が誕生しました。
将軍・綱吉をもてなす迎賓館としても活用されています。

六義園という名前は、『詩経』(毛亨・毛萇が伝えた毛詩)大序にみえる中国古代詩の6分類、風(ふう)・賦・比・興(きょう)・雅(が)・頌(しょう)という分類法を、紀貫之が倣って『古今集』の序で述べた和歌の六種の分類「六体」に由来。
紀貫之は、「和歌に六義(りくぎ)あり」(和歌六義)としています。

明治初年に、三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎が荒れていた六義園を買い取り、整備を実施し、現存する赤煉瓦(あかれんが)の塀で囲んでいます。

昭和13年に東京市に寄贈されて一般公開。関東大震災、東京大空襲の大きな被害も受けず、昭和28年に国の特別名勝に指定されています。

枝垂れ桜の開花期と紅葉時期にはライトアップも実施

標高35mの築山・藤代峠(ふじしろとうげ)から庭全体を一望できる園内随一の絶景スポットで、春の新緑、秋の紅葉はとくに見事。
内庭大門をくぐった先の枝垂れ桜も圧巻で、見頃の3月中旬〜4月上旬には『しだれ桜と大名庭園のライトアップ』(夜間入園)を実施。
紅葉の最盛期の11月下旬~12月上旬にも『紅葉と大名庭園のライトアップ』(夜間入園)が実施されます。

駒込は駅にもツツジが植栽されるほどツツジが有名ですが、園内にもツツジが植栽され、毎年ゴールデンウィークの前後に見頃を迎えます。

ほかに、仙人が棲むという理想郷を彷佛とさせる蓬莱島(ほうらいじま)、藤代峠にいたる渡月橋、山陰橋など、趣き深い場所が随所にあり、カメラマンにも人気の庭園になっています。

また園内の吹上茶屋では、風雅な池を眺めながら、「抹茶と季節の上生菓子のセット」が味わえます。
見逃しがちですが、これもおすすめです!

抹茶と季節の上生菓子のセット
煉瓦の塀は岩崎弥太郎に由来
柳沢吉保
信州との国境、甲斐国武川(むかわ=現・山梨県北杜市武川)を拠点とした武川衆(むかわしゅう)をルーツにする武士。武田家滅亡後に家康の家臣となったのが柳沢吉保の祖父・柳沢信俊。吉保の父・安忠は大坂夏の陣で目覚ましい活躍をみせています。
父・安忠は上野国館林藩士となり、その藩主が徳川綱吉。綱吉が将軍となると吉保も幕臣に。
1688(元禄元)年に新設された役職の側用人となり、大名として上総国佐貫城主に出世。1694(元禄7)年、武蔵国川越藩主となり、翌1689(元禄8)年4月21日に駒込染井村の前田綱紀旧邸を拝領。これが現在の六義園です。
柳沢吉保は武田家の復興にも尽力し、恵林寺(山梨県甲州市)で信玄の百三十三回忌法要も実施しています。吉保の菩提寺も恵林寺です。
造園時は川越藩主だった柳沢吉保
六義園に足繁く通った徳川綱吉

庭園の見どころ
1 枝垂れ桜とライトアップ

例年、開花に合わせて見頃の3月中旬〜4月上旬頃には『しだれ桜と大名庭園のライトアップ』(夜間開園)を実施しています。

庭園の見どころ
2 紅葉とライトアップ

例年、紅葉の最盛期に合わせ、11月下旬~12月上旬頃に『紅葉と大名庭園のライトアップ』(夜間開園)を実施しています。

庭園の見どころ
3 出汐湊

大泉水の南東の畔。目の前に中の島を眺める絶景スポットです。
「和歌の浦に月の出汐のさすまゝに夜鳴く鶴の聲ぞ悲しき」(『新古今和歌集』)
和歌の浦は、現在の和歌山市にある万葉人に愛された景勝。

庭園の見どころ
4 渡月橋

「若の浦に潮満ちくれば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る」(山部赤人)からの本歌取り。
「和歌のうら 芦辺の田鶴の鳴声に 夜わたる月の 影そさひしき」の歌から名づけられた石の橋です。

庭園の見どころ
5 藤代峠

六義園北東の奥に位置するのが藤代峠。渡月橋を渡った先に上り口があります。
ご本家、和歌山にも和歌浦湾が一望できる藤白峠があります。
和歌浦、紀ノ川、藤代峠、妹背山、吹上浜などはすべて万葉集や古今和歌集に詠まれた紀州の景勝地。

庭園の見どころ
6 ツツジの競演

元禄時代、大名屋敷の庭を扱う庭師が住んだという駒込染井村を中心にツツジの園芸ブームが江戸市中に起こりました。
六義園には古品種のツツジが数多く植えられ、それが現存しています。
例年、4月中旬〜5月中旬に『春の六義園〜大名庭園でつつじを楽しむ〜』が開催されます。

庭園の見どころ
7 雪見型灯籠VS春日型灯籠

高さが低く、池畔に置かれ、池を照らす雪見型灯籠、神社や寺に置かれる園路を照らす春日型灯籠の2種類の灯籠が配されています。

春日型灯籠
雪見型灯籠

庭園の見どころ
8 蓬莱島

神仙思想を主題とした石組の蓬莱島(ほうらいじま)。大泉水の島の一つです。
不老不死の仙人が住んでいるとの伝説の島ですが、この島が築かれたのは明治時代。
岩崎弥太郎の庭園になってから。

江戸切絵図に見る 六義園

松平時之助は、柳沢保申(やなぎさわやすのぶ)のこと。大和郡山藩の第6代(最後)の藩主。
地図は幕末の1853(嘉永6)年当時の駒込・染井村界隈。
柳沢保申は、戊辰戦争では幕府軍として戦いましたが、明治18年に久能山東照宮宮司にもなっています。


 

六義園
名称 六義園/りくぎえん
所在地 東京都文京区本駒込6-16-3
関連HP 東京都公園協会公式ホームページ
電車・バスで JR・東京メトロ南北線駒込駅から徒歩7分
ドライブで 首都高速神田橋ランプから約6km
駐車場 周辺の有料駐車場を利用
問い合わせ 六義園サービスセンター TEL:03-3941-2222
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

取材協力/東京都公園協会

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